日本人くらい近代社会をみごとに受け入れながらも、そこに神話的思考のようなものまで上手に接木して残した、という民族は少ないと思います。私たちはまだ神話的思考というものがなんであるか、触ってわかるぐらい生々しい感覚を保存しています。それほどに私たちの近代化は不徹底だったわけですが、この不徹底のおかげで神話的思考が近代の思考によって絶滅させられることのないユニークな現代文明の一形態をつくってきたのです。
しかし、その神話的思考はいまやただ「様式だけ」になって、テクノロジー文明と結合することによって、逆に由々しい毒を流しはじめています。しかも日本文化全体が、同じ症状を呈しはじめています。フレキシブルにつくりあげられてきた日本の文化が、その闊達さによって、その独特の不徹底さによって、いまかえって危機に陥っています。ですから神話の思考の豊かさを知った私たちは、ここで神話と現実という問題にとりくまねばならないのです。

カイエソバージュⅠ人類最古の哲学』中沢新一・著(講談社)

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