都筑民家園アートプロジェクト vol.3
ニュータウン☆パラダイス - 遺跡とマンションの間

 横浜市北部に位置する、港北ニュータウンの大塚歳勝土遺跡公園内にある都筑民家園と、隣接する竹林を舞台に楽園が生まれます。
 今回で3回目となる「都筑民家園アートプロジェクト」は、近隣から移築された江戸中期の古民家のたたずまいや遺跡とマンションにはさまれたユニークな立地に触発されたアーティストたちが、この場所で得たアイデアを様々な素材や表現を用いて、彫刻、絵画、インスタレーションなどの作品によって、アートの新たな可能性を探る試みです。
 アートを通じて、それぞれの作品に込められた古代と現代をつなぐ物語や、場所との出会いによってうまれた美と新たに見いだされた視点を広く共有することで、アートと社会の関係性を見つめ直します。
 この楽園が新鮮な驚きや懐かしさを発見できるあたらしい出会いの場となることでしょう。

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「ニュータウン☆パラダイス」展開催の意義

 都筑民家園とその周辺で「ニュータウンパラダイス」展が開催された意義について、民家園の軌跡を振り返りながら私見を述べてみたい。
 この民家は長沢さんという家の旧宅であった。元は牛久保村という現港北ニュータウンの一角にあり、横浜市歴史博物館にある古文書によると、江戸時代、長沢家は村役人を務める有力な家であった。
 多くのニュータウンがそうであるように、牛久保村も昭和40年代までは田園であった。その後の開発で田園風景も、そこに点在していた民家も姿を消してゆくが、長沢家住宅は、歴史的また建築的な文化財価値により保存されることになった。ただし、元の場所ではなく、ニュータウンを象徴する然るべき場所への移築という条件がついた。
 私と長沢家住宅の出会いは20年程前、解体された住宅の部材を中川中学校の倉庫で見た時である。木造のみすぼらしい倉庫の中で、既に腐りかけていた部材が多く、元建物とは思えない、ただの”モノ”達であった。将来本当に保存・活用ができるのかなとというのが出会いの時の正直な感想であった。
 その後、遺跡公園の整備が進む過程で、長沢家住宅の再生が始まった。先に述べたように部材は相当痛んでいたので、大幅な補修が厳密な調査結果を基に行われ、その作業は単なる移築ではなく、ほとんど”復元”作業であった。私は建物と周辺空間が復元・整備されていくのが楽しみで、繁く現場に通った。
 復元作業と平行して、その活用のあり方が議論された。歴史的文化財としての価値を踏まえ活用すべきとの意見が大勢である一方、市民の活動の場として柔軟な活用を求める意見もあった。この問題は都筑民家園として開園した後も続いたが、「歴史への遠慮」は歴然と存在した。また、今考えると活用の議論にニュータウンの中に存在することの意義付けはあまりなかったような気がする。
 開園10周年を迎え、民家園の空間で現代アート展「民家園 de アート茶室」が開かれた。古民家と現代アートの異質な組み合わせは新鮮であった。テーマは「茶室」という「歴史への遠慮」が薄れていくのを感じたものである。
 そして今回の「ニュータウンパラダイス」である。今回の展覧会を観て、開園前からの活用の議論に対して明確な結論が出たと個人的には確信している。歴史的空間はニュータウンと対峙・融合することで、現代と繋がり、新たな創造の場として多様な活用が許されたのである。
 私のこの確信の前提には、もちろん今回の展示が若手から中堅の作家によるレベルの高い展覧会であったことがあげられる。一人一人の個性が強く見えるグループ展の傾向の中で、個々の作品は「歴史に敬意」を払いながら、充分に「ニュータウンパラダイス」を語っていた。

横浜市歴史博物館学芸員・井上 攻

 今年で3回目を迎えた都筑民家園アートプロジェクトは、港北ニュータウンにある大塚最勝土遺跡公園内の古民家を含む一体を主に美術の視点によって捉え直し、この場所の歴史性と深く関わりながら、人とモノと場所との新たな関係を探っていく試みです。
 地域の多くのボランティアに支えられた都筑民家園は、訪れるものに懐かしさや安らぎをもたらす憩いの場所である同時に、示唆に富み、多くのインスピレーションを与えてくれる不思議な場所でもあります。
 遺跡とマンションにはさまれたこの場所のユニークな立地はニュータウンにぽっかりと空いた大きな穴のようなに感じられるかもしれませんし、見方によっては古代と現代の間に渡された橋のようであり、時空に開いた扉のようでもあります。また、ここに移築され蘇った江戸中期の古民家のたたずまいには、時間の重みに耐えて来たものの美しさとともに、そこにかつて暮らした家族の痕跡や、そこから想起される物語の断片など、想像力を刺激される様々な側面が見いだされます。
 この場所は、私たちに多様な視点をもたらし、意識を活性化させてくれます。それはこの場所では、歴史的時間の広がりが、地殻変動した大規模な地層のようにダイナミックに空間に置き換わっているからかもしれません。このような場所と展覧会を通して関わることは、作り手にとって、自らの表現を振り返り新たな可能性を模索する上でも貴重な体験といえるでしょう。
 今回の出品作家16名の展示作品は、彫刻、絵画、インスタレーションと様々なスタイルで表現され、素材もガラス、石、金属、樹脂、陶、紙、布など幅広く使われています。一見雑多な時空のアマルガムに統合していこうというのがこの展覧会のねらいです。
 果たして、ここを訪れた人々のまなざしと、作り手のまなざしが結び合った先に「楽園」は立ち現れたのでしょうか?歴史的時間の豊穣さと、その不可思議さに触れている時、私たちはすでに「それ」に包み込まれているのかもしれません。
 最後に、展覧会にご協力をいただいた都筑民家園のボランティアの皆様、ご協賛いただいた企業の方々、懇切にご助言を賜った方々に心よりお礼申し上げます。

2008年12月
都筑民家園アートプロジェクト実行委員会・金井 聡和

都筑民家園アートプロジェクト vol.3
ニュータウン☆パラダイス - 遺跡とマンションの間

会期:2008年10月26日(日)〜11月8日(土)
会場:都筑民家園(旧長沢家住宅)、竹林 横浜市都筑区大棚西2(大塚歳勝土遺跡公園内)
主催:大塚歳勝土遺跡公園都筑民家園管理運営委員会、都筑民家園アートプロジェクト実行委員会
後援:横浜市都筑区
協賛:ALTE MEISTER、株式会社トゥイン、Gallery OII、有限会社バッフル、有限会社ユニ映像、株式会社リュウスタジオ、有限会社イエナランドスケープ、株式会社ウィズハウスプランニング、有限会社京葉スポーツ、株式会社たま機工商会、風庵
参加作家:伊藤岳、岡本敦生、奥野美果、小田恵理子、小山祥吾、金井聡和、鬼頭明稚、斉藤典子、斎藤正人、柴田芳作、鶴田仲介、中田ナオト、久村卓、藤井志帆、宝珠光寿、松沢結

オープニングレセプション
日時:2008年10月26日(日) 17:30〜
※ レセプションは招待状が必要です。

アートツアー
日時:10月26日(日)、11月1日(土) それぞれ14:00~
会場内を巡りながら、各作家が作品解説を行います。

アートカフェ
日時:11月1日、2日、3日 10:00~16:00
コーヒー・紅茶・抹茶など 300円